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脳が作り出す低音

最近のテレビは「画質」「サイズ」に加え「薄さ」も特徴の一つになっているようです。一方薄型テレビを実現するために、音声を出力するスピーカは薄く小さな形状のスピーカを搭載することで、高音質の確保が困難になりつつあります。
特に小型スピーカでは波長の長い低音を再生することが困難なため、低域における音質劣化が発生し大画面でありながらも迫力のない音になってしまいます。
このような物理的に制限がある小型スピーカでも、より低音が鳴っているように聞かせる技術として「耳の錯覚(人間の聴覚特性)」を利用した低音域拡張技術があります。

低音域拡張で用いられる耳の錯覚(Missing Fundamental)とは、「基本周波数を欠いた倍音列を聴くと、存在しないはずの基本周波数の音高が知覚される」というものです。例えば、200Hz、300Hz、400Hz、500Hz という周波数成分を持つ複合音を聴くと、人間の耳(あるいは脳)は、これらの倍音を個々に知覚するのではなく、その基本周波数(最大公約数)である 100Hz の音が鳴っているように錯覚します。(図1:TI Bass Boost)
この錯覚を利用し、100Hz の音を再生できない小型スピーカでも 200Hz 以上の倍音列を出力することで、100Hz の音が鳴っているような錯覚を引き起こすことができます。このように小型スピーカでは再現できない低音を、その倍音によって脳の錯覚で作り出すのが、低音域拡張技術の基本原理です。

では実際にこの倍音列をどのように生成するかが問題ですが、近年の DSP の発達によりデジタル加算合成が簡易に可能となっており、倍音列を高精度で合成出力することが可能になっています。また、TI 独自で開発した倍音生成アルゴリズムは、TI 製オーディオ信号処理用固定小数点DSP である TAS3000 シリーズ で TI Bass Boost として提供されています。

TI Bass Boost
図1:TI Bass Boost


TAS3000 シリーズ

『TAS3000』シリーズは、先進のオーディオ・アルゴリズムの実行に必要な高精度演算を実現する 48 ビッ ト DSPコアおよびデバイス制御用の 8051 互換 CPU を搭載し、製品ラインナップに応じて各種ディジタルインターフェース(I2S、GPIO、SPDIF)、高性能 ADC・DAC・PWM を 1 チップに集積し提供しています。
また TI のオーディオ DAC、PWM パワーステージ製品と組み合わせることで、高音質のフル・ディジタルオーディオシステムを安価に実現できます。
さらに TI 独自のドラッグ・アンド・ドロップ型の直感的な操作性を備えた『PurePath Studio』グラフィカル開発環境を提供し、開発者をサポートしています。開発者は、『PurePath Studio』で用意されている標準的なオーディオ処理モジュールやサードパーティ・TI 独自アルゴリズムモジュールを組み合わせていくことで、高音質を実現する最終製品を短期間に開発し市場に投入できます。

PurePath Studio Graphic Development Environment
(図2)PurePath Studio Graphic Development Environment
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[執筆]
日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
営業・技術本部 マーケティング/応用技術統括部
ソフトウェア開発 岩田 佳英