電圧監視 IC の検出電圧と電圧精度

SVS(電圧監視 IC)の検出電圧と電圧精度

電圧監視 IC はリセット IC と呼ばれることもありますが、電圧をモニターし、設定された検出電圧以下に電圧が低下した場合に RESET 信号を発してシステムにリセットをかけて CPU の誤動作による暴走によっておこる事故を防止します。また、電源投入に多チャンネルの電源を RESET の解除により順次に ON するシーケンス起動電源を構成するのにも使用されます。しかし SVS の監視電圧の精度により、検出したい電圧との電位差が発生してタイミングや動作保証での問題が発生することがあります。

電圧検出精度による問題

ほとんどの電子回路では、電源電圧の要求精度は±5%となっています。この電圧を下回った時点で、負荷の回路では動作保証が出来なくなります。このために、電圧監視 IC は理想的には電源電圧の 95%の電圧を検出し、その電圧を下回った時点で RESET を発行出来ることが理想となります。しかし、問題となるのは電圧監視 IC 自体の電圧検出精度です。電源回路の電圧精度は±0%ではなく、基準電圧の誤差と温度による変動、電圧設定抵抗の誤差、負過電流による電圧ドロップなど、様々な電圧誤差を持っています。電圧監視 IC もやはり基準電圧の誤差と温度による変動や電圧設定抵抗の誤差などの検出電圧の誤差を持つので、この誤差分の電圧を考慮して検出電圧を決める必要があります。

電圧監視 IC の検出精度が 3%だった場合(基準電圧の Typ 値が 1%、全温度範囲での温度ドリフトが 1%、電圧設定抵抗の誤差で 1%の合計 3%として)、検出したい電圧が電源電圧の -5%とすると電圧監視 IC の検出電圧は 5%+3%=8% として 92%の電圧にする必要があります。



これにより電圧監視 IC の検出電圧が一番高い時でも、動作可能電圧にも関わらず RESET が発動してしまうことを防止できます。しかし、電圧検出 IC の検出電圧がマイナス誤差最大時にはどうなるかというと、検出電圧が電源電圧の-8%-3%=-11%までは動作しない可能性があるということになります。つまり、電源電圧の要求は-5%までなのに、-11%までリセットが発動しない可能性があるという、-5%から-11%までの電圧範囲がグレイゾーンとして出来てしまうことになり、何のために電圧監視 IC を付けてシステムの信頼性を向上させようとしたのかわからなくなります。

このグレイゾーンの 6%の幅は、電源検視 IC の検出精度±3%により発生しているので、精度が高ければその分グレイゾーンを狭くし、システムの信頼性を向上させることができます。TI の最新の電圧監視 IC である TPS3808 では EEPROM による出荷検査での電圧トリミングにより高い精度で検出電圧を設定することができます。高い温度安定度と合わせて 3.3V 以下の製品では室温で±0.5%、全温度範囲でも±1.25%という性能によりこのグレイゾーンの幅を大幅に縮める事を可能としています。

高精度化により、検出電圧を-6.25%に設定することが可能となりましたが、この条件では電源電圧が -5%をわずかでも切ってしまうと、すぐに RESET が動作してしまい、何らかの瞬間的な過負荷によるアンダーシュートでいちいちシステムリセットがかかるのも問題となります。実際にはもう少し低めの検出電圧として、電源電圧が-5%以下まで下がってもある程度は黙認してしまい、頻繁にリセットがかからない様にし、何らかのトラブルが発生した時のみ確実にリセットがかけられる様に高精度な検出電圧とするといった選択がされることが多くあります。

検出電圧の設定値の問題

国産の電圧監視 IC は、ほとんどの場合、検出電圧を 0.1V 刻みでラインアップしています。ユーザーは、使用する電源電圧に応じて検出したい電圧を算出して、それに近い電圧製品を選択することになります。しかし、ここで発生する問題点は、検出電圧の設定が 0.1V 刻みしかないために、電源電圧が 3.3V の時、電源電圧精度 5%+検出電圧精度 3%として 92%の電圧で検出しようとして 3.3Vx0.92=3.036V を算出しても 3.0V あるいは 3.1V 品しか選択できません。3.1V では 3.3V の 94%の検出電圧となるために高すぎるので 3.0V を選択することになりますが、3.0V は 3.3V の91%となり、予定より低めになってしまいます。0.1V 刻みでは 3V では 3%程度の刻みで製品がラインアップされていることになりますが、1.5V では 6%刻みでしかラインアップされていないことになりますので、希望の検出電圧からかなりかけ離れた電圧となる可能性が出てきます。

これに対応するために、TI 製品の電圧検出 IC の検出電圧設定は、0.1V 刻みではなく、3.3V 用、1.8V 用といった、使用する電源電圧での製品ラインアップとし、検出電圧は使用する電圧の 92%の設定(H シリーズ)93%の設定(G シリーズ)など、電源電圧が±3%の場合に対応出来るように 95%の設定(E シリーズ)と言うように使用する電圧を基準として何%低い電圧で検出するかで検出電圧を設定した製品としています。このために検出電圧は、端数も持った値となっており、TPS3808 の G シリーズ(93%)を例にとると

PRODUCT NOMINAL SUPPLY VOLTAGE(2) THRESHOLD VOLTAGE(VIT)
TPS3808G01 Adjustable 0.405V
TPS3808G09 0.9V 0.84V
TPS3808G12 1.2V 1.12V
TPS3808G125 1.25V 1.16V
TPS3808G15 1.5V 1.40V
TPS3808G18 1.8V 1.67V
TPS3808G19 1.9V 1.77V
TPS3808G25 2.5V 2.33V
TPS3808G30 3.0V 2.79V
TPS3808G33 3.3V 3.07V
TPS3808G50 5.0V 4.65V


表のように使用する電源電圧でラインアップされ、その 93%の値が検出電圧となっており、各電源電圧での最適検出電圧の設定となっています。

製品化型番は基本的に以下のルールで製品化されています。

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